小児がんの治療をご希望の方へ

陽子線治療の対象となる主な小児がん

化学療法や手術と組み合わせて治療する必要があります。
治療期間は2~6週間程度です。

脳腫瘍頭蓋内にできる腫瘍。小児に多く見られる脳腫瘍は、神経膠腫しんけいこうしゅ、胚細胞腫瘍、髄芽腫ずいがしゅなどです。
横紋筋肉腫おうもんきんにくしゅ 骨や筋肉・脂肪などの軟部組織にできる腫瘍。頭頸部、泌尿器、生殖器、手足などに発生することが多い。
神経芽腫しんけいがしゅ 交感神経のもとになる細胞ががん化したもので、背骨のわきの交感神経節、副腎などに多く発生する。
悪性リンパ腫 リンパ組織から発生する悪性腫瘍。縦隔(左右の肺、胸骨、胸椎に囲まれた部分)、腹部の発生が多い。

当センターでの取り組み

小児がんに重点を置いた全国初となる陽子線治療施設です。

こども病院(小児がん拠点病院)に隣接・渡り廊下で直結

兵庫県立こども病院に隣接し、渡り廊下で行き来できるようになっています。同病院とは院内電話で通話が可能で、医療情報も共有できるシステムになっています。 小児専門スタッフとしっかりと連携し連絡を取り合うことで、安全に高度な治療を受けていただくことができます。
また、兵庫県立粒子線治療センターの附属施設として今まで培った高度なノウハウを生かした適切な陽子線治療を提供します。

小児用設備が充実しています

小児専用の陽子線治療室を設けています。
治療室の中ではDVDを見ながらリラックスした状態で治療ができるよう設備が整っています。
また、小さなお子さんの心情に配慮したアメニティ(内装や備品類)を準備し、安心して治療を受けていただけます。

アメニティ
内装イメージ
アート:小木曽瑞枝

隣接するこども病院からの渡り廊下には観覧車やポートタワーなど、神戸の日常風景を彩り豊かにデザインしています。

アート:小木曽瑞枝

アート:長谷川仁

3階小児用治療装置の壁には「海のトンネル」をイメージしたデザインを施しています。

アート:長谷川仁

麻酔医が常勤しています

検査・治療時に鎮静が必要なお子さんのために、小児患者への麻酔経験が豊富な麻酔医が常勤しています。また、小児のための麻酔導入・回復室を設け、安全に配慮した診療体制を築いています。

麻酔・鎮静

麻酔・鎮静は、通常の睡眠と異なり、お薬で眠ります。
お薬で眠っていても、強い刺激(痛みなど)があると、体が動くこともあります。
当センターでは刺激によって体が動くと、病巣に対して、正確に陽子線ビームを当てられないため、刺激が強くても体が動かない強い麻酔・鎮静をします。
このとき、お薬の作用によって、呼吸状態や、循環動態(心臓の動きや血圧)など、色々なことが起こり、全身状態に強く影響が出ることもあります。これに対し、しっかりモニターを行って監視を行い、異常を早期に発見して対応することによって、お子様の安全を確保しています。
小児の鎮静予定はこちらをご覧ください

麻酔・鎮静に関連して

  • ・当センターでは、麻酔・鎮静を実施して治療をするお子さんに対して、痛みを伴う処置は通常ありません。
  • ・麻酔・鎮静を実施する前には経口摂取制限がかかります。食事は1日2回食べられるよう時間を工夫しますが、1食分減ってしまうこともあります。
  • ・お子様が不安を感じないよう、遊びながら入眠する・シール集めの台紙を用意して毎日シールを貼って治療達成感が得られる等の工夫をしています。
  • プレイルーム

  • シール台紙

具体的な手順

  • 1.隣接する「兵庫県立こども病院」に入院

  • 2.固定具と呼ばれる道具を作るときや、治療時に、「兵庫県立こども病院」から渡り廊下を通って当センターに移動

  • 3-1.固定具を作るとき(センター1階)

    治療の流れ

    • MRI前室に入室

      保護者に抱っこしてもらい安心できる状態で、眠たくなるお薬を投与する。

    • CT撮影室に移動

      固定具の作製とCT撮影

    • 必要ならMRI撮影

    • MRI前室に移動

      目覚めるまで滞在。
      その後、こども病院へ戻る。

  • 3-2.治療するとき(センター3階)

    治療の流れ

    • 小児処置室に入室

      保護者に抱っこしてもらい安心できる状態で、眠たくなるお薬を投与し眠る。

    • 治療室に入室

      治療前に行った治療の計画に体の位置に合わす。
      位置合わせが終了したら、陽子線ビームを照射する。

    • 観察室に入室

      状態が安定していることを確認した後、こども病院へ戻る。

晩期障害と陽子線治療

小児がんは、治療法の進歩により約7割は治癒するようになっています。
その一方、長期生存者が増えるにしたがい、抗がん剤や放射線治療等による晩期障害(治療後、長期間が経過してから現れる合併症)が多く発生しています。
晩期障害は、こどもの心身の成育や将来の生活の質を大きく左右します。

小児がん治療の主な晩期障害

成長・発達障害低身長、学習障害、骨格・筋・軟部組織への影響 など
生殖機能への影響不妊など
臓器機能への影響腎臓機能低下、肝臓機能障害、視力・聴力の低下 など
二次がん(腫瘍)がん治癒後、再び新しいがんの発生

陽子線治療は放射線治療の一種で、がん細胞にピンポイントで照射することが可能です。
通常の放射線治療と陽子線治療の安全性(有害事象の発生率)と治療効果を比較した研究の結果、陽子線治療の方がより安全に同等の効果を得られるという研究成果※を受け、平成28年4月より小児の固形がんに対する陽子線治療に健康保険の適用が認められました。

※厚生労働省先進医療会議(2015.8.6)資料「粒子線治療」(日本放射線腫瘍学会粒子線治療委員会)