院内施設の紹介

施設の特徴

1最新の技術を結集させた最先端の陽子線治療システム

当センターの陽子線治療装置は最先端の技術が結集されています。陽子線の照射には従来から「ブロードビーム照射」といった方法が用いられてきました。これは、病変の形状に合わせて陽子線ビームの束を照射する方法です。それに対して、近年「スキャニング照射」といった方法が開発されてきました。これは、病変を点の塊と見なして、それぞれの点を1つずつ塗りつぶすように照射する方法です。両者にはそれぞれ得意分野があり、「ブロードビーム照射」は呼吸で動くような病変に有用で、治療時間も短くできるといった利点があります。一方、「スキャニング照射」は究極のピンポイント照射が可能で、複雑な形状の病変やあまり多くの放射線を当てたくない臓器が手前にある場合などに有用性を発揮します。したがって、病気の位置、大きさ、形状、可動性などによりどちらに利があるかで分かれます。当センターの装置は、シンクロトロン加速器による世界初のユニバーサルノズルを搭載し、ブロードビーム照射とスキャニング照射の切り替えを可能にした装置で、2つの治療室のどちらでも両方の技術が使える設計になっています。将来的には患者さんが治療台に寝たままの状態でブロードビーム照射とスキャニング照射を組み合わせて、より精度の高い治療の実現が可能になります。また、照射時の位置合わせに有用なロボットアーム搭載型の6軸補正システム、最新のモンテカルロ法を用いた線量分布計算を可能にする治療計画装置など最新で最高レベルの装備を備えています。

多機能照射ノズルイメージ図

2交通の利便性に加え公園に面した開放的な環境での治療

当センターはポートアイランド内に位置しており、関西の交通の要である三宮から20分以内で来ることができます。陽子線治療は数週間の通院治療になることが多く、通院に便利な位置にあることは体力的にも負担が小さいです。したがって、仕事を続けながら、あるいは普段の日常生活を維持しながら通院治療を受けられる可能性も高くできます。また、新幹線の新神戸駅、神戸空港からも近く、交通の利便性がきわめていい場所にありますので、遠方からの受診・セカンドオピニオンにも便利です。さらに、市民の憩いの場として利用されている南公園に当センターは面しています。3階の患者待合室からは公園を一望することができ、静かで落ち着いた開放的な環境で治療を受けることができます。
治療室は2室備えています。1室は海をモチーフとしたかわいらしいデザインとなっており小児用、もう一室はシックなデザインとなっており成人用となっています。各室独立した有線放送を導入しており、希望があれば洋楽、邦楽、ジャズ、ロック、懐メロなど様々なジャンルの音楽を聴きながら治療することができます。また小児用治療室には治療台に設置できるタブレットPCを用意しており、アニメや映画などのDVDを見ながら治療もできます。大人から子どもまでリラックスした状態で治療していただけるよう心がけています。

3神戸メディカルクラスターの連携による高度ながん治療

ポートアイランド内は神戸医療産業構想の一環として、日本最大級のメディカルクラスターとして発展してきました。これは、医療にかかわる病院、研究所、企業を集約させて、より高度な医療、医学を目指そうというものです。当センターは外来での通院治療のみを行っていますが、近隣の医療機関と連携することで徒歩圏内での入院、化学療法の併用治療、マーカー挿入など外科的処置を伴う医療行為、医療相談を簡便にさせて、総合的で質の高い医療の実践に取り組んでいます。 また、兵庫県立粒子線医療センター、兵庫県立がんセンター、神戸大学をはじめ、各疾患の専門分野の医師を交えてのカンファレンスをテレビ会議システムなど用いて定期的に行っています。

4県立こども病院に隣接し総合的な小児がん治療の実践

当センターは小児の患者さんの治療に重点をおいた施設として開設されました。 2つの治療室の1つは小児専用となっています。 全国最大規模の小児がん拠点病院である兵庫県立こども病院に隣接して、渡り廊下で行き来できるように設計されています。 小児の患者さんは病棟の化学療法で免疫力が低下している場合がありますので、成人の患者さんとは接しない建物設計になっています。 さらにこども病院の小児専門スタッフとしっかりと連携し連絡を取り合うことで、小児の患者さんもこども病院で病棟管理を行いながら当センターで円滑に陽子線治療を受けることができます。 センター内は小児の心情に配慮した内装やアメニティで安心して治療を受けていただくことができるだけでなく、授乳室も完備されています。また、当センターは小児患者の麻酔経験の豊富な麻酔科医が常勤しています。従来の施設では手術の予定のないときにしか鎮静をかけながらの治療ができませんでしたが、陽子線治療のために常勤していますので1日に複数の患者さんに対して安全かつ効率的に鎮静をかけながら治療をすることが可能です。これらの試みは国内初の施設として高い注目を集めています。さらに治療装置も鎮静をかけた小児の患者さんに対応すべく静音設計されています。

5兵庫県立粒子線医療センターとの連携

当センターは兵庫県立粒子線医療センターの関連施設として開設されました。兵庫県立粒子線医療センターは陽子線、炭素線(重粒子線)の治療について豊富な実績があり、国内でもこの分野のリーダーとしての役目を果たしています。当センターと兵庫県立粒子線医療センターは毎日全症例に対して、テレビカンファレンスシステムを用いて治療方針や治療計画についての協議を行っています。多くの医師、技師、物理士、看護師が協議に参加することで、それらの意見を集約させてより適切な医療が行えるよう努めています。また、通院の可否、入院の必要性、陽子線と炭素線のメリットなどを総合的に考慮して、どちらの施設で治療を受けていただくことが望ましいか判断してフレキシブルに対応できる体制を整えています。

陽子線治療装置について

陽子線治療装置

陽子線治療に必要な装置は、大きく分けて、陽子を加速する『加速器系』と、加速された陽子線を治療室まで運ぶ『輸送系』、陽子線を患者さんに照射する『照射系』および陽子の加速度や照射量を制御する『制御系』から構成されます。

治療装置は、加速器を使って陽子を最大で光速の約7割まで加速させ、照射室まで導いて患部に照射します。陽子は加速させることによって、高い運動エネルギーを持つ陽子線になり、体の奥深くの病巣を照射します。

設備外観図