頭頸部がん

はじめに

頭頸部がんとは、耳鼻科領域(おおよそ顔面~頸部)にできるがんのことです。色々なタイプ(組織型)のがんができますが、90%以上が扁平上皮がんでそれ以外をまとめて非扁平上皮がんと呼びます。
治療法としては、まずは手術を検討しますが、難しい場合は放射線治療や薬物療法を行います。扁平上皮がんには放射線治療や薬物療法が効くことが多いですが、非扁平上皮がんの中にはあまり効かないものもあります。手術ができたとしても取り切れなかった場合は放射線治療を追加します(術後照射と言います)。

陽子線治療の適応

陽子線治療が行われることが多い部位は、副鼻腔(上顎洞、篩骨洞など)、鼻腔、上咽頭、耳下腺、涙腺などです。組織型は、悪性黒色腫(粘膜)、腺様嚢胞がん、嗅神経芽細胞腫、腺がんなどの非扁平上皮がんが多くなっています。
陽子線治療が保険診療になるか先進医療になるかは下の表をご参照下さい。

部位\組織型扁平上皮がん非扁平上皮がん
口腔・咽頭・喉頭先進医療保険診療
口腔・咽頭・喉頭以外保険診療保険診療

陽子線治療の方法

部位・組織型にかかわらず、ほとんどの場合、70.4Gy(RBE)/32回で治療しています。
術後照射の場合、66Gy(RBE)/33回になります。
薬物療法を併用する場合、神戸低侵襲がん医療センターで薬物療法を行いながら陽子線治療を行います。

当センターの治療方法の特長

①スキャニング照射

重要な臓器が密集している頭頸部のがんに特に有用と言われているスキャニング照射が使えますので、きめ細かな治療が可能です。
下に副鼻腔悪性黒色腫に対するスキャニング照射の線量分布を示します。腫瘍の形に沿った無駄のない照射となっています。

  

②歯科口腔外科との連携

神戸低侵襲がん医療センター歯科口腔外科と連携して、①歯牙処置(照射の邪魔になる金属の除去や状態の悪い歯の抜歯)、②マウスピース作成(舌などを照射範囲から外す)、③口腔ケア(照射中~後)などを行っていただいています。
下にマウスピースの1例を示します。マウスピースを装着することで舌が下に押され、腫瘍から遠ざかっています(=照射範囲から外れる)。